ぼくのなつやすみの最近のブログ記事

今更ですが年末のコミケにて販売した同人誌の通販が始まっています。
今回もらき☆すた本ですが、よろしくお願い致します。

とらのあなで扱っています。
http://www.toranoana.jp/mailorder/article/04/0010/14/41/040010144192.html

表紙はこんな感じですよー。
retort.jpg
なんか今回は表紙で買ってくれる方もいて自信作ですー(笑

■ガタガタ、ギシギシ

夜になった。
父は、予定どうり最終の電車に乗り帰った。
「それじゃもう寝ようか」と叔父。
「ぼくちゃんはこの居間に布団を引くから」
「一人で寝れるよね」
大きなこの居間で一人で寝るということは初めてだった。
なにしろぼくの住む東京の家は団地だ。
居間といっても四畳半ぐらいの広さだ。
それに比べてここは十畳以上ぐらいあるんじゃないかと思った。
そんな広いところに一人。
心細いのはもちろんのこと、なぜか暗いこの家に慣れなかった。
そんなことを考えていると叔父はなにか持ってきた。
「蚊がでるからこれをつるよ」
部屋の四隅にフックがありそれに持ってきた物を引っかけながらつるしていく。
これは何だろうと思っていると。
「これは蚊帳だよ」
「かや?」
「そう、虫が入ってこないようにこうしてつるしてこんな風に入るんだよ」と言うと叔父はその蚊帳の下の方からささっと開けて中に入った。
それはまるで大きな虫かごのようだった。
「おやすみ」とおばあちゃんが布団をひいてから二階に上がっていった。
ぼくはすぐ布団に潜り込んだ。
回りは静かでどこからも音が聞こえない。
ふと気がつくと蚊帳越しになにか見える。
どうやら写真のようだ。
白黒の写真が鴨居の上に飾ってあった。おじいさんの写真だ。
その写真がだれのものかしらないけどそれは、まるでぼくを見ているような気がして思わず布団を顔までかぶった。
静かさとその写真のせいでこのままじゃ眠れないと思っていたがやがてうとうとと眠ってしまっていた。
どのぐらい時間がたったのであろう。
蒸し暑さとなにかの音で目が覚めた。
いつのまにか外では風が吹いてたようだ。
そのせいでこの古くなった家がきしいでいるのだ。
木でできていた雨戸が大きな音を立ててギシギシガタガタと大きな音を立てているのだ。
その音を聴いてるとまるでなにか大きな動物の鳴き声みたいで怖くなって眠れない。
ぼくは暑いのに布団を頭までかぶりその音を聴いていた。

■姉妹
叔父の家に着くと玄関でおばさんとぼくの母の母、おばあちゃんが迎えてくれた。
「お世話になります。」と父が挨拶して言った。
「ほんとによくきたね」おばさんとおばあちゃんは満面の笑みをぼくに投げかけてくれた。
やはりぼくは照れくさくもごもごと小さく返事をする。
父はぼくに向かって怒ったように「ちゃんと挨拶しなさい」と言った。
「いいよ、いいよ、まだなれないんだから」とおばあちゃん
「それより家に上がりなさい」とおばさん
父とぼくは招かれるまま部屋に上がった。
部屋に上がると畳と木の匂いがした。
「もう夕方だから飯にしよう」と叔父。
なんだか早い夕御飯だなと思いつつ座った。
父は丁寧に叔父と叔母、おばあちゃんに深々と頭を下げて挨拶している。
ふとふすまの隙間、隣の部屋からのぞいている目を発見した。
ばっちり目があった。
叔父はそれに気付いたいたのか、大きな声で
「ほら二人ともこっちに来て挨拶しなさい」と言った。
その声に促されて二人の女の子が入って来た。
「うちの子供だよ」と叔父。
二人は父に
「こんにちわ」と挨拶。
そのまま、また隣の部屋にさささと戻ってしまった。
「どうやらうちの子も恥ずかしいらしい」と叔父は笑って言った。
父が、
「では、飯食ったら帰りますんで」と
「もう遅いから明日の朝出たらどうです」と叔父。
「仕事がありませので」と父。
「とにかくご飯にしましょうか」と叔母が言う前におばあちゃんはすくっと立ち上がり台所へ。
回りではとうに夕方の日も下がり、暗い。
そのせいかすこし寒い感じがした。
さっきまでうるさいぐらい鳴いていたヒグラシの声ももう聞こえずとても静かだった。

■電車は走る

新宿から松本行きの電車に乗りガタゴトガタゴトと進む。
途中で乗る前に買ったお弁当を食べ、いっしょに買ったお茶を最後に飲みながら外を眺めていると向こうにおおきな富士山が見えた。
そして山々をすり抜け、何個もトンネルを抜けて進む。
やがて何個か目のトンネルを抜けるとすぐに川が見えた。
この川は叔父の家のそばを通っている。
その川が見えたということはもうすぐ到着という合図だ。
電車から降りる用意をしながらぼくはこれからの事を思ってちょっと暗くなった。
なぜなら今は、となりに父がいるけどついてしまったら父は帰ってしまう。
そうなるとぼくはひとりぼっちになるからだった。
まもなく電車は駅に着いた。
駅から降りると改札口には叔父が待っていてくれた。
「良く来たね」と叔父はやさしく笑いながら迎えてくれた。
ぼくは恥ずかしさからか思わずだまってうつむいてしまっていた。
「さあさあ、もうすぐ日が暮れるから家に向かおう」
そういいながら叔父はぼくの荷物と持つと歩き出した。
「車で来たからすぐつくよ」と行った先にはなんと軽トラが止まっている。
「お父さんと前に乗るからぼく君は悪いけど荷台に乗っていってくださいね」
叔父はそういうとひょいとぼくを持ち上げ軽々と荷台に乗せられてしまった。
そして車は走り出した。
けっして舗装もされていない道路はガタンゴトンと車を跳ね上げ、それに合わせてぼくも荷台の上で跳ね上げられていた。
このままじゃ落ちちゃうじゃないかと思うぐらい、ぼくは必死に荷台のふちを握りしめ体を固定していた。
揺られる車の荷台で流れる景色を見ているとやがて大きな川にさしかかる。
その時、夕方の大きな太陽が沈もうとしているのが見えた。
オレンジ色の大きな太陽はまるでその河に沈んでいく様な感じにさえ見えていた。
まわりではヒグラシの声がこだましている。
そんな景色をぼーっと見ているうちに叔父の家に着いていた。

■なつやすみになってぼくは、山梨にある叔父の家に行くことになった。

叔父の家は山梨の奥にある田舎だった、畑と葡萄を生産する農業を営んでいた。
近くには大きな川が流れ、裏には竹林、回りは広大な畑が広がっていた。
そんな叔父の家に行くことになったのは、ぼくが喘息を持った虚弱体質の体を父が心配に思い自然の中で綺麗な空気を吸い太陽の下で暮らせばすこしは良くなると思ったからだ。

そんなわけでぼくはこのなつやすみ、ここで暮らすことになったのだ。

2011年9月

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